松野莉奈の「若者のすべて」
私立恵比寿中学「若者のすべて」
2018年9月22日に「エビ中 秋空と松虫と音楽のつどい 題して『ちゅうおん』」が開催された。
この公演はサイリウムやコールが禁止されていて、アイドルならばそれがウィークポイントなりそうだが、松虫の鳴き声とエビ中の歌声、生バンドが秋風のほんのりと肌寒い空気感とベストマッチしていて、むしろ曲に向き合う強みになっている。
また『ちゅうおん』は今年で2回目の開催となるのだが、初回からメンバーソロによるカバー曲が披露されており、今年も職員*1選曲のカバー曲が披露された。
カバー曲についてそれぞれに触れたいところだが、1番触れたい内容はライヴ中盤で披露されたメンバー全員によるカバーのフジファブリック「若者のすべて」だ。
フジファブリック志村正彦の魅力
まずはフジファブリックについて述べよう。
フジファブリックのボーカル志村正彦は2009年12月24日に急逝してしまった。
だが志村正彦の作る音楽は不思議となにか惹きつける力があった。決して歌は上手くなかった。
しかしその力は志村正彦とフジファブリックの独特な雰囲気が織り成す音楽性なのかもしれない。
上手い言葉で表現出来ないが、感傷的な曲を作らせたらトップクラスの実力を持っていると思う。
それだけでなく、志村正彦はおバカな曲も得意でそんなギャップも良さである。
〈メメメメメリケン!!〉ってなんだよ。笑
こういうわけわからんフレーズが大好きなんだ。
自分はフジファブリックが大好きだが、知ったのは『モテキ』の主題歌である「夜明けのBEAT」からで志村正彦が亡くなった後だった。亡くなる前に一度でいいからライヴに行ってみたかったと常々感じる…。
ちなみにフジファブリックはまだ活動を行っているので気になった方は是非ライヴや音源をもっと聴いてみて欲しい。
そして「Surfer King」と同じアルバム『TEENAGER』にフジファブリックの代表曲とも言える情緒的な「若者のすべて」が私立恵比寿中学のカバーで披露された。
- アーティスト: フジファブリック
- 出版社/メーカー: EMIミュージックジャパン
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何年経っても思い出してしまうな
ここで共通点というと安直であり、愚鈍な気がするが、私立恵比寿中学のメンバーの1人である松野莉奈も2017年2月8日に急逝している。
「見た目は大人、中身は子供。」というキャッチフレーズで活動していた彼女、そんな彼女と志村正彦のギャップに、更に共通点を感じてしまう。
ここまで述べたのは、終わってからこじつけのような思い付きで言ったものであるが、ライヴ中のエビ中と「若者のすべて」のリンク率はすごかった。
まず「若者のすべて」の歌詞の初めで〈真夏のピークが去った。天気予報士がテレビで言ってた。〉と歌う。
ちゅうおんは夏の終わり、秋に公演されるため、ここで既に鳥肌が止まらなかった。
その前に実は中山莉子が「金木犀の匂いに救われた。*2」と言っていたので、そこでフジファブリック来ないかなぁと思った後に「若者のすべて」が来たため、更に鳥肌は加速した。
そしてサビの〈最後の花火に今年もなったな。何年経っても思い出してしまうな。〉ここでもエビ中とフジファブリックがリンクしてしまう。いやエビ中とフジファブリックというより「松野莉奈と志村正彦に。」だ。
というのも、エビ中の夏の恒例行事「エビ中 夏のファミリー遠足 略してファミえん in 長岡2015」の最後で花火が上がる。
その時、松野莉奈が感極まって涙してメンバーにいじられるシーンがある。
自分は毎回「若者のすべて」を聴いた時は勝手にこのシーンを勝手に思い出してしまう。
それだけでこの曲をエビ中で聴けた意味があると思ってしまうが、サビの9小節目から〈ないかな。ないよな。きっとね。いないよな。会ったら言えるかな。瞼閉じて浮かべているよ。〉と歌われる。
志村正彦自身にも言えるが、エビ中が歌うことで松野莉奈のことを想って歌っているように思える。
他にも〈すりむいたまま僕はそっと歩き出して〉とエビ中自身のことを歌っているようにも感じられたり、〈最後の最後の花火が終わったら、僕らは変わるかな?同じ空を見上げているよ〉と松野莉奈に向かって歌っているように感じられる。
松野莉奈「若者のすべて」
ちゅうおんの最初はカバー曲を全員で歌う。それ以外、全員で歌われたカバー曲は「若者のすべて」が初めてだ。
ただの深読みだと思ってもらってかまわないが、この「若者のすべて」は松野莉奈が存命していたらソロのカバー曲として歌っていたかもしれない。
むしろ、今の松野莉奈に向けて歌った歌なのかもしれないと感じた。
FC限定でちゅうおんのCDが発売される。
そんな想いを馳せて「若者のすべて」を聴いてみてはいかがだろうか?